mirage of story

〜5〜




 
 
 


目に映る寒々しい光景。

焼け焦げた木々。
形を留めないかつては家として人々を温かく包み込んできた瓦礫達。
それしか目に映らない。



........。

生きているものの気配は全く感じられない。 
ただ感じるのは、静と無だった。












「本当に........何もなくなってしまった」



ライルの口から思わず零れた言葉。
それは彼がこの状況を前に率直に思った感想だった。




この場所はつい昨日までは人々が泣き笑い暮らしてきた村だった。
世界の片隅にあるごく小さなちっぽけな村だった。

――――。
そう、昨日彼がその手でこの世から消し去る前は。






頭の中に過る昨日の記憶。

逃げ惑う人達。
泣き叫ぶ子供の声。
村を燃やし続ける留まることを知らない炎。

瓦礫の下から覗くのは、既に動かぬ人形と化した人間達の哀れな成の果ての姿。
辺りにまだ残る焦げ臭い匂いと鼻を突く異臭が記憶をより鮮明に呼び起こさせる。

死んだ村。
そんな言葉が頭を過った。




思わず迸る寒気にまた新たな記憶が蘇る。


崩れ去った村。
その中でその光景を見て見ぬ振りをして剣を片手に歩く自分。

その姿は実に冷酷で人としての温かみの欠片もない。
まるで心を持たない機械のように死んだように目を曇らせて歩いていた。











(.....俺は、昨日此処で)



嫌な汗が首筋に流れるのを感じた。
背筋に冷汗が流れじっとり身体を湿らす。
ゾクッと全身に悪寒が走る。


それは今更感じる罪悪感か。
それとも昨日無力に死んでいった人々の呪いか。

それは判らないが良い気はしない。









(.......昨日、此処で何人もの人が俺に助けを求めた。
何度も何度も、縋るように)







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