mirage of story

 






 
 

 
だが引っ張る力が強くて座ったままのカイムは前に倒れそうになる。
だが今度はどうにか踏ん張って急いで体制を立て直す。 







「わ、わかったよ!
引っ張らないで、また転ぶから」



「あ、ごめんなさい.....」




パッ。

シエラの手が離れ自由になったカイムはゆっくりと立ち上がる。
そして服に付いた土を払い、フゥと一つ息を吐く。















「.......それじゃあ行こう。
今度はちゃんと道案内頼むよ、シエラ?」



ッ。




「きゃっ」



そう言うと今度はカイムがシエラの手を取り、そのまま走り出す。
その勢いに今度はシエラが転びそうになるが、それをどうにか堪えてカイムに引かれ縺れそうになる足を前に運ぶ。









「ちょっ.....」



タッタタッ。
段々と遠ざかって小さくなっていく花畑と花の香り。
白に包まれた別世界から再び緑の森の中へ。


手を取り走り出すカイムの後ろ姿にフッと笑みが溢れる。





彼等の心を癒す花の園。

不安が吹き飛ばされた。
二人の胸にはこれから先長く永く続くはずの辛い旅への小さな希望の光が差していた。



――――。
もうさっきまで居たはずのあの場所が遠くほんの彼方にしか見えなくなる。

そこまでひたすら走ってきたカイムは、そこでふと足を止めた。





 


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