「あ、ありがとう」
「ん、どうかした?」
引き起こされて向き合う二人。
シエラは何だか目を合わすのが恥ずかしくて目を逸らしたままにお礼を言う。
そんな彼女に何だか違和感を感じたのか鈍感なカイムは不思議そうに彼女を覗き込み視線を送る。
「っ!な、何でもない!」
覗き込まれて再び近付く顔にまた顔が火照った。
何なんだ、これは。
シエラはこのよく判らない感覚を振り払おうと首を左右に振る。
ッ。
「あ.....」
頬を薄い紅に染め首を横に振るシエラ。
フッ。
その視線がカイムを通り越したある一点でパッと止まる。
ピタリと止まる視線。
何かを見付けたのか。
カイムはそう思いシエラを見る。
「えっと.......今度はどうしたの?」
「あの場所....私、知ってるわ!
前に来たことがあるの!
あそこ―――絶対にあの場所よ、間違いない」
シエラは視線の先を指差して、静かに足をその方向に進め始める。
「ちょっ....シエラ?」
フッと引き寄せられるように歩き出すシエラ。
カイムはそんな彼女を追い掛けようと後ろを振り返る。
ッ。
するとそこには今まで見てきた森の緑とは違う色。
緑の中に一点、映える美しい白い色。
今まで見えなかった光景。
「.......凄いな」
思わず一言呟いた。
シエラの向かう先。二人の視線の先。
木々の間から少し顔を覗かせるそこに在ったのは、陽の光を受けて可憐に咲き乱れる小さな花畑だった。
道に迷っているという現実がスッと頭の中から消えた。
一気に意識は美しい白色に。
見るものの心を奪うような美しい空間がそこには在った。
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