(我が目的を果たすためならば、どんなものも惜しまぬ。
――――――。
そのためにはまず奴に、ライルにもっと働いてもらわねばな)
微笑を浮かべる表情の裏に、部下であるライルの顔が浮かべる。
(奴は人間を葬り去るためなら何だってやってのける。
奴には果たさなければならない強い想いがある。
――――。
愛する者を失った恨みを果たそうと、常に想い続けているのだからな)
ロアルは浮かべる少年の顔に重ねるようにもう一つの姿を浮かべる。
.......。
それはまだ幼き少女の姿。
それは五年程前までこの国を治めていた前の王の一人娘、つまりこの国の姫だった少女ルシアスの姿。
思い浮かべる彼女。
それは今は亡き人。
彼女は五年前の魔族と人間の間に激しい戦乱の最中、戦いに巻き込まれ誰にも行方が分からぬまま姿を消した。
人間に、殺された。
戦いの相手は人間だった。
つまり魔族側の姫である彼女を殺す理由があったのは、紛れも無く人間だった。
人間は、何の罪も無い幼い彼女を殺した。
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