聞こえるだけの声に彼は誓った。
ッ。
彼女に聞こえていないのは分かっていた。
だけど構わない、どうしても言わずには居られなかった。
『―――――――イル......』
暫く夢に浸った。
響き渡る心地良い声に溺れた。
―――――。
だが無情にもその時は永遠ではない。
聞こえていた彼女の声が、だんだん遠退いていくのを彼は感じる。
夢が、この幸せが覚めていくのだと心の何処かで悟った。
「.........いつか、絶対に行く......から」
抵抗はしなかった。
抗っても虚しいだけだということは判っていた。
ッ。
無抵抗のまま、遠退く声に次第に彼の意識も遠退く。
現実へと彼は引き戻される。
(........)
辛さや悲しみ、苦しみに溢れた現実。
寒々しい現実。
これがライルが今生きていかなければならない世界。
―――――――。
夢になど逃げてはいられない。
.......。
さぁ、次に目を覚ました時にはもう夢の中の幸せは忘れてしまおう。
憶えていれば、またあの幸せに逃げてしまいたくなる。
現実に戻るんだ。
彼女のために、そして自分のために。
ッ。彼は彼女の余韻の中で完全に意識を手放した。
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