mirage of story

 
 
 
 
 




 
「..........。
だけどね、シエラ。
これから仲間として、共に過ごすからにはこれだけは分かっておいてほしい」




カイムの顔に、哀しみを含んだ笑みが灯る。















「俺にとって沢山心配を掛けられるよりも、誰かが哀しんだり苦しんだりしてる姿をただ何もせずに見ている。
そのことの方が、ずっとずっと辛いんだ。

俺はもう自分の無力さのせいでもう何も失いたくない。
後悔したくない。

俺は自分に出来る限りの力を貴方に捧げて守りたい。
そして共に魔族を倒したい、そう思ってるよ。


..........。
だから無理だけはしないで欲しい、これは俺からの唯一の願いだよ」





彼が浮かべる薄く淡い笑み。
――――。
瞳は溜め息が出る程に優しい。









「シエラ?」



「...........分かった。
無理はしない、約束する。

本当に、ありがとう。色々と本当にありがとう」




彼の優しさの中にいる自分が心の底から幸せ者だと思った。

包まれる彼の温もり。
強張っていた身体は、何時の間にかこの温もりに溺れていた。

ずっと、この温かい幸せの中に居たいと思った。









.