彼女はそう言って笑ってみせる。
――――。
だが身体に走る激痛をどうしても隠し切れない。
明らかに彼女の顔が引きつっていた。
「!本当に無理しちゃ駄目だ、傷が開く!
シエラは昨日酷い傷を負ったんだ。
まだまともに動ける体じゃないんだよ!」
彼女を制す。
昨日の出来事の推移を知る者としては当然の行為だった。
昨日の一件。
魔族達との対峙。
カイムが彼女の元に駆け付けた時には、その場に居た魔族達により酷い怪我を負わされていた。
急所への負傷は辛うじて避けていたものの、一歩間違っていれば取り返しの付かないことになっていたのは明白であった。
――――。ッ。
奴等が最期の刃を向けたあの時に間一髪駆け付け彼女を救い出さなければ今のこの安堵した空間は無かったはずだ。
それほどまでに、危機迫った修羅場を乗り越えて二人は今揃って此処にいる。
「........。
本当に大丈夫。
これくらいの怪我で立ち止まってしまうようじゃ、この先もっと辛くて苦しいことがあっても乗り越えられるわけない。
だから進まなきゃ。進まなくちゃいけないわ。
だから、大丈夫」
シエラはそう瞳に強い光をみせ笑い、そして一瞬フッとその瞳を陰らせる。
「――――――。
それにね、こんな傷の痛み殺された皆の痛みに比べたら掠り傷同然よ。
こんなの傷のうちに入らない、入れちゃいけない」
ッ!
そう言った彼女は痛みを堪えて立ち上がる。
「!なっ、シエラ!」
カイムは咄嗟に立ち上がって立ち上がる彼女の肩を支えた。
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