だが、木々が光を遮っているため森の中は薄暗く不気味な感じだ。
その不気味さを増幅させるように、何処からかカラスが数匹飛び立つ。
ビクッと身体が震えた。
(不気味......)
――――ガサッ。
シエラがそんな森の不気味さに暫し圧倒されていると後ろから唐突に、何か物音が聞こえるのを感じた。
シエラは後ろを振り返る。
.....人の気配がする。
姿はよく見えないが、確かに気配を感じる。
シエラは警戒して辺りを見回した。
人か?それとも獣か?
どちらにせよ、薄暗い森で出会うには少しばかり恐かった。
警戒を続けて暫く。
シエラの遠く後ろの方にある木の陰に人影のようなものが見えた。
(.......え。
こんな所に人が居るなんて)
正直驚いた。
この森は入り組んでいて迷いやすいため、村の人でもあまり入ることのない場所である。
そんな所に自分以外に人が居るなんて思っていなかった。
驚きに呆然としていたシエラだが、すぐにシエラの中の『どうしてこんな所に人が?』という疑問は一瞬で消えた。
代わりに頭の中にはある考えが浮かぶ。
その考えとは。
(........あの人に聞けばあの場所が分かるかもしれない)
あの人影が何者なのかは気になったが、この時のシエラにとってあの場所へ辿り着くということが最優先だった。
普通なら、この状況で優先すべき順位が違うと思うが。
だがシエラはお構いなし。緊張しながらも、人影が見えた木の陰の方へ歩いていく。
「――――あの」

