ただ。
今はただ、早く楽になりたい。
一刻も早くこの苦しみから解放されたい。


少女の中にあるのは、残酷にも死に見出だしてしまった最期の希望。
それしかなかった。












 
.......。

だがどうしたことだろう。
いくら待っても死は訪れてはくれない。
降り下ろされる刃の冷たさも、それが身体を貫く燃えるような熱さもやって来ない。

本当にどうしたことか。
それどころか、今まで迫っていた足音が突然途切れる始末だ。




ッ。
少女の抱いた残酷な希望が一秒ごとに打ち砕かれていく。






あぁ、神様。
貴方はこの苦しみから抜け出すことを許してはくれないのか。


........。
どうして?何故?
私が貴方に何をしたというの?
罪を犯したとでもいうの?

私はただ―――ただ平和を願った。
それだけなのに。











(―――....)




少女は最期の希望を断たれた絶望を胸に、死を決意し閉ざした瞳を静かに開けた。

フッ。
開けた瞳の先には、相も変わらず深い闇。






ッ。

だがその闇に一色。
先程には無かったはずの一筋の蒼がそこには存在していた。




それは一人の少年。
蒼く青く闇の中に煌めくのは少年の瞳。

.......まるで夜空に現れた彗星のようだった。




その突然現れた少年はスッと手を差し伸べる。

この手を取れというのだろうか。
少女はその手を暫らく見つめ、それからスッと自分の手を差し出す。
死という最期の希望を失った彼女にとって彼の手が唯一の最後の希望に思えた。








ッ。

薄れてゆく意識の中で少女はその手を掴む。離さないようにしっかりと、その手を握り締めた。
その固く繋がれた手と手に、少年は優しく微笑みを見せて少女を宥めるよう言う。














「───大丈夫。
お前は俺が必ず守るから」


少年の声が強く、甘く響いた。






 


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