mirage of story



 




シエラの中にあるエルザに助けられてからの四年間分の記憶。
その記憶を目一杯に弄り、頭の隅々まで白い小さな花の記憶を探す。




そして。







(あ!)



記憶の中にレイリスの白い花の断片を見つけ、シエラは心が躍った。
記憶の中のある一つの場所が、その条件と一致した。


ある場所。
それはシエラがシエラになった場所。エルザに本当の最初に出会った場所だった。



















「.....やっと着いたわっ!」




心躍らせ再び足を走らせたシエラ。
目的のその場所はそれほど遠くもなかったが、また近くもなかった。

ハァ....ハァ。
酸素を欲している身体が酸素を求める。
だからとりあえず落ち着こうと大きく息を吸い込み、暫らくその場で乱れた呼吸を整えた。







シエラはエルザに助けられてから一度だけ、この森に来たことがあった。

この森は入り組んでいて迷いやすいためなかなか中に入る機会はないのだが、一度好奇心に負けて中を探検したことがあったのだ。


その時当然のごとく森の奥深くに入り込んで迷ってしまったシエラは、偶然レイリスの花が一面に咲いている場所を見つけた。
それを記憶の片隅に思い出して、少し村から離れたこの森までやってきたのである。












「えっと........あの場所へはどう行くんだろう?」


しまった。
薄暗い少し不気味な森を前にして、今更ながら肝心なことを思い出す。

そうだ。
前にあの場所を見つけた時は、道に迷って歩き回った末に辿り着いたのでどう行ったのかはっきりと覚えていなかった。



帰り道は、捜しに来てくれたエルザの背中で夢の中。
どういう道を通ったのかも分からない。






道が分からない。つまり、入ったら即迷子。
シエラの中でそんな方程式がドンッと腰を据えた。