mirage of story

〜2〜










「.......」





ルシアスが部屋を出ていき、部屋の中をしばらくの沈黙が支配した。
その状況に、ライルはただ王の方を無言で見ることしか出来ずに居た。







「―――さぁ、ライル....ずいぶんと待たせてしまったね」




このライルにとって気まずい沈黙を破ったのは、王の言葉と相手に安らぎを与える優しい笑みだった。






「い....いえ、全然待ってないです」



「そんなに緊張しなくてもいいんだ、ライル。
さぁ、こっちへおいで。

.....お前にも渡したいものがあるんだ」






「――――俺にも.....渡したいものですか?」



王の言葉にライルは戸惑った。




いくらルシアスの父とはいえ、相手はこの国を治める王だ。
その王から渡したいものがあるなんて言われても、何を渡されるかなど見当もつかなかった。



ライルは何だか.....とても緊張してきた。
王は緊張しなくてもいいというが、この状況で緊張するなというのが無理というものだ。





「そうだ。
でも、渡す前に一つ聞いておかなければならないことがある。

.......いいかい?」




王の強い意志が籠もった瞳が、ライルを見つめる。

その瞳と言葉に、ライルは頷く。







「――――聞きたいことは、ただ一つだ」



そして、流れる一時の沈黙。





「ライル。
お前に.....ルシアスを守り、ずっと何があっても傍に居る覚悟があるかい?」