ルシアスの不思議そうな瞳が、自分の手のひらの何かを捉えて見つめた。
小さな手の平。
そこには、淡く静かに輝く小さな指輪。
それがルシアスの手の中で紅の輝きを放っていた。
「......綺麗な指輪」
ルシアスは思わず息をのんだ。
指輪が放つその光は、ただ綺麗というだけではなく
何か、他に人を惹きつけるものを感じた。
人の意識を吸い込むように、その光は奥深かった。
「――――さぁ、はめてごらん」
ルシアスは王の言葉に一瞬上を見上げて、そして静かに指輪に視線を戻した。
その場にただならぬ緊張感が駆け抜ける。
辺りから全ての音が消えた気がした。
風の音も、外から聞こえていた人の声も全てサッと何処かに消え去った。
まるでこの場所が、この場所に居る三人だけが隔離されてしまった。そんな気さえした。
そんな中、ルシアスはゆっくりとその指輪を自分の指へと運んでゆく。
ただ指輪をはめる。
ただそれだけのこと。
そのはずなのにこの状況を前にライルは、このルシアスの行動がとても大事なことのような気がしてならなかった。
ルシアスの指に、指輪がはめられてゆく。
――――ッ。
そして、とうとう指輪が完全にルシアスと一つになる。

