「.....だったら、僕には近付かない方がいいよ。
僕みたいなのと一緒に居たら、お姫様も笑われちゃうよ?」
ライルは、無理矢理にまた笑ってみせた。
「.....ちゃんと聞いてたから、言ってるの。
ちゃんと、あなたを見てたから言ってるんだよ!」
ルシアスは迫るかのように、ライルの方に一歩前に進み出た。
「自分のことを話すあなたは....すごくすごく辛いのに笑っていた。
すっごくすごく、無理してた。
一人で、哀しくて....辛くてどうしようもないのに、笑ってるのを見て―――私ね、見ていられなかったの。
助けてあげなきゃって、思ったの」
ルシアスはそう言い、まっすぐにライルの目を見つめた。
(―――僕を助ける?)
ライルの中に、少女の言葉が谺した。
ライルは今まで、ずっと耐えてきた。自分の填まるべき、運命に。自分の存在に。
そんな苦しみ耐えるライルの姿に今まで『助けてあげなければ』という感情を持った者が居ただろうか?
いや、居ないはずだ。
皆が魔力のないこの少年を見て思うこと。
それは『魔力がない出来損ない』。『魔力がない者は、何の価値もない』などと言う虐げる感情。
『可哀想だが、仕方がない....魔力がないのだから』などという同情。そして諦めの感情くらいだっただろう。

