mirage of story




 
 
(―――何だろう?
....お姫様は、出来損ないの僕なんかと関わることなんかないのに)




そうライルは、心で思いつつルシアスに視線を向けた。






「―――お姫様?」 



「......」



ライルはルシアスに問い掛ける。
だがルシアスはライルの服を握り締めたまま、何もしゃべらない。





「....えっと、僕もう行かなきゃ」



無言で居るルシアスに、ライルは恐る恐るそう言った。

そしてまた、ルシアスに背を向け歩き出そうとする。





「......待って!
―――私ね、あなたに言いたいことがあるの!」



「....言いたいこと?」



何だろう?
ライルは、そう思った。






「えっとね.....私と、お友達になって?」


「......え?」




あまりに予想外の言葉だったので、ライルは思わず間の抜けた声を出してしまった。 

ライルの頭の中には、きっと他の人たちと同じように自分を蔑むような、そんな言葉が来ることを何処かで予想していたから。






「どうして....聞いてなかったの、お姫様?

僕、魔力がないんだよ?.....出来損ないなんだよ?
なのに、どうしてそんなこと」



一瞬、ルシアスの言ってる言葉の意味が分からなかった。 





(.....僕のこと、からかってるのかな?)


正直、ライルはそう思ってしまった。






「.....ちゃんとお話は聞いてたよ!
あなたに魔力がないってことも、私と同じで....お友達が居ないってことも。

私、ちゃんと聞いてたよ」