だからシエラは、二人が出会ったこの日に自分を助けてくれたエルザに、何かを送ろうと前からずっと想っていた。
感謝と、飛び切りの愛を込めて。
何を渡そうか。
本当に悩んだ。何日も悩んだ。
夜中の悩んで暫らく寝不足が続いた。朝寝坊したのもこの連日の寝不足せいだ。
だがその苦悩の甲斐あって、昨日の夜に見付けてしまった。エルザが喜ぶ最高の贈り物が。
「あれ?
確か此処に咲いてたはずなんだけどな」
丘の上へと来たシエラは、周りを見渡す。
走ってきて、息が切れていた。
だがそんなことはお構いなしにあるものを探す。
「あれ?」
だが、目的のものが見つからずに戸惑う。
探しているのは、いつもこの辺りに咲いている白い小さな花。
花の名前は『レイリス』。エルザの好きな花だ。
此処にその花がたくさん咲いているのを思い出して、その花を送ろうと考えたのだ。
それなのに。
「この前までは、沢山咲いてたはずなんだけどな」
なのに今は、辺りに一本も見当たらない。
(.....誰かが摘んじゃったのかしら?)
シエラはがっかりして、肩を落としそう言った。
運が悪かったんだ。誰かが全て摘んでしまって。
これは、運の悪い偶然だ。
そう思っていた。この時は。
実際、本当にそうだったのかもしれない。
だけど今になってはこう思えてならなかった。
あの時、あったはずの花が消えていたこと。
あれがこれから始まる運命の始まりだったのだと。
これがシエラとエルザを引き離すこととなった、あの出来事の始まりだったのだと。
シエラはもう一度周りを探す。
だがやはり見つからない。
でもシエラはエルザにあの花を渡したかった。
エルザの喜ぶ顔が見たかった。
シエラは、エルザの笑った顔が何よりも好きだったから。
シエラはそんな想いで、他に花のある所はないか記憶の奥から探る。

