もう、ライルは哀しみを抑えて笑うことには慣れていた。
だから、涙だって出てこない。簡単に抑えられる。



.....笑っていればいい。
辛くたって、何だって、笑っていればどこかに消えてくれる。
そう信じているから、ライルは辛くとも笑っていることに決めていた。 






(.....これで、お姫様にも嫌われちゃったかな?
―――魔力がない魔族なんて....出来損ない。ただ嫌われるだけなんだから) 


ずっと黙っているルシアスを見て、ライルは心の中でそう思った。





(―――でも、これでお姫様は辛くなくなるよね?
だったら.....嫌われても、別にいいかな。

.....このお姫様には、笑っていてほしいから。笑っていなきゃいけないんだ)



人に嫌われるのは、ライルにとって決して好きなことではない。

だけど、この自分の目の前に居るお姫様が笑顔で居られるなら―――嫌われても構わないと思った。




あの温かい笑顔。
あの笑顔は、みんなを幸せに出来る。そんな笑顔だと思ったから。






「―――じゃあ、僕もう行くね」




黙り込むルシアスを前に、ライルは何だか居づらくなって、ルシアスに背を向けた。
そして、そのまま前に足を踏み出す。






――――クイッ。

だか、何かに後ろから引っ張られた感じがしてライルは足を止めた。



ライルはそっと振り返る。
すると、そこにはまだ涙が残る瞳でライルを見つめながら、服を掴んで引き留めるルシアスの姿があった。