どうしてだろう?
ライルはルシアスの泣く姿を見て、自分の心に哀しみが降りてくるのを感じた。
それは、"立場"という檻に閉じ込められる辛さというものを、ライルがよく分かっていたからかもしれない。
最もルシアスの『姫』という立場と比べれば、ライルの抜け出したい立場は天と地の差だったが。
「......お姫様、泣かないで。
嫌だよね。自分が決めた訳でもないのに、もう自分が填まらなきゃならない型が決まってるなんてさ。
よく分かるんだ、僕。お姫様の気持ち」
「.....」
ルシアスがライルの方を見つめる。
まだ涙が残る瞳に、ライルの深く青い瞳が映った。
「――――僕も、時々嫌になるんだよ。自分のことが。
お姫様はずるいよ。僕なんかより、ずっといい立場に居るのに嫌になっちゃうなんて。
本当に.....ずるいよ.....」
言葉が途切れる。
「僕は皆に馬鹿にされるんだ。
僕には魔力がないから。
おかしいでしょ?魔族なのにね。
みんな僕のことを、出来損ないって言うんだ。
だから僕も、友達だなんて一人も居ないよ」
ライルはそこまで言うと、哀しみを抑えるかのように薄く微笑んだ。
「......ほら、お姫様。
お姫様は僕なんかより、ずっといい立場に居れるんだ。
だから、泣いてちゃダメだよ。笑っていなきゃ、ね?」

