前に父が、このお城にはお前と同じくらいのお姫様が居るんだよと言っていたのは覚えていた。
でも、まさかこの女の子がそのお姫様だとは思っても見ない。






「どうして謝るの?」



焦って、頭の中が真っ白になっているライルにルシアスは不思議そうに尋ねた。






「ど、どうしてって!
僕はただの庶民だし、お姫様は偉くて特別だから。

なのに僕はすごく失礼なことを......」



ライルは、焦って何にも考えられずに自分でも何を言っているのか分からない状態になっていた。

端から見ても、相当混乱していることが見て取れた。







「......」



そんなライルの様子を見て、何故かルシアスは唇を噛み締める。






「......あなたもみんなと同じこと言うのね。

みんなみんな、私に『姫だから他の人とは違う特別な人』だって言うの。
だから誰もお友達になってくれないのよ」



「え?」





ルシアスが、ボソッとそう言ったのでライルは驚いたように言葉を詰まらせた。

そう言うルシアスの顔が、とても哀しく見えて。
言葉が出てこなくなった。







「..........私だってみんなと同じだもん!姫だからって関係ないもん、私は私だもん。

なのに、どうしてみんな意地悪言うの?
何で、特別だなんて言うの?」



ルシアスの瞳から、大きな涙が零れ落ちる。







「.......」



ライルは、どんな言葉をかけていいのか分からずに、ただ黙っていた。

そんなライルを横に、ルシアスは言葉を続ける。








「私だって普通に暮らしたい。
みんなとお友達になりたいのに。

そう思うことがいけないことなのかな?
もしそうだったら私、姫なんかじゃなくていい。姫なんかやめたいよ」




ルシアスの涙に潤んだ瞳が、ライルの心に突き刺さる。