「きゃっ!
え、あなた誰!?何っ.....あ、痛ぁい!」




いきなり声をかけられて、相当驚いたのだろう。
女の子はライルの方を振り返ると同時に、派手に尻餅をつく。






「だ....大丈夫?」



ライルは咄嗟に手を差し出した。





「う....うん」



女の子はライルの手に掴まり立ち上がる。
手のひらが重なり、彼女の温かさがじんわりと伝わってきた。






(わぁ....可愛い子だなぁ)



少し顔を赤くしながら、立ち上がる女の子の姿にライルは思わずドキドキした。

でも女の子に対して、そもそも誰かに対してそんな風に思ったのは初めてで、この時のライルにはこの感情が何なのかは分からなかった。






「えっと.....あなたは、誰?お客様?」



服についた砂を払い落として、女の子はライルに聞いてきた。






「僕はライルだよ。
父さんに連れて来られてここに来たんだ。
き....君は?」




「そうだったのね!
えっとね、私はルシアス!

このお城に住んでるの」





女の子は笑顔で、そう言った。
太陽のような温かい笑みで、心の中がポッと火が灯ったように温かくなった。

だが女の子の言葉に、ちょっと待てよ?と突っ掛かる。





「えっと、このお城に住んでるって―――じゃあ....まさかお姫様!?」



「うん、みんな私のことを姫って呼ぶわ!」



その言葉を聞いて、ライルは青ざめた。





「....わあぁっ!ご、ごめんなさいっ!
ぼ....僕、お姫様だったなんて知らなくて、ごめんなさいっ!」 



ライルは動揺した。

目の前にいるこの女の子はこの国の姫。自分は庶民の子供。
そのことを幼いながらも理解していたライルは、自分がしてしまった姫に対する無礼なことに焦らずにはいられなかった。