mirage of story

〜4〜









「.....ハハハ...フフ...」






闇に溶け込む主の笑い声。
不気味で悍ましい程に妖艶な笑いにライルは耳を傾けた。 










(この人は.......一体何を考えているんだ?)




ただ無言で見つめる。
闇夜に浸り突然に笑い出すロアルに思わず身震いする。





(あの人が何を考えているのか俺には全く判らない.......あの人が何を想い何を感じているのかも)





ライルはロアルのことを主として尊敬していた。 

魔族を率いる主導者としてのその実力も共に仕事をしている彼は痛い程分かっているつもりであった。
先代の王とはその方向性は違えど、民や兵からの信頼も厚く人間達を倒すために魔族という種族全体が一致団結出来ているのもこのロアルの統率力があってこそである。




周囲からの信頼。統率力。
王として尊敬に値するその器。

だがライルがロアルを慕う理由はそれだけではない。 




ルシアスを失った哀しみから抜け出せずにいたあの頃、手を差し伸べ進むべき道を指し示してくれた人。
大切な者を失い生きる希望を失ったライルに、再び生きる希望を生きる理由を与えてくれた人。 
それが、ロアル。



ルシアスを失った哀しみ。
生きる希望を失い現実から目を背け、がむしゃらに無鉄砲に突き進んでいた。

自棄染みた暴走の日々。
勿論そんな日々を積み重ねた所で何の進歩も進展も見出せなかった。




そんな絶望の淵に居たライルにロアルは道を指し示してくれた。
ルシアスの居ない現実と向き合い、そして前へと進む道を教えてくれた。


それが復讐という道だった。
人間達への報復という道だった。

ロアルはそんな道をライルに指し示し、そして共に進もうと手を差し伸べた。
決して綺麗とは言えない復讐という道。
たがそれこそがライルにとって救いの道であり、大切な者を失った世界で生きていく唯一の道だった。







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