mirage of story

 
 
 
 
 



 
あの者は人間。
そして指輪を持つ者、我等最大の敵の仲間。

私は魔族。
仲間の命を狙う敵であり、分かり合うことなど到底無い。 


例え私とあの者の間に、かつてどんな繋がりが在ったとしても。
過去と今では全ての状況が違う。














(――――もし、もし私の存在があの者の記憶の中に残っているのならば)





もうあの頃には戻れない。
どんなに本当の自分が懇願し叫ぼうとも、闇に呪われし今の自分はそれを残酷に無視して突き進む。


あぁ、また消えていく。遠退いていく。
まだ僅かばかり残る人としての感情が、想いが。

その代わり、浮き出てくるは不気味で不敵な笑い。
残酷で残忍な闇の意思。











(―――――。
我の再生と復活の、そしてこの腐りきった世界に下される世紀末の祝宴を彩る絶好の華となろう。

我を楽しませよ。
そして世界を絶望に突き落とす最高の駒となれ―――.......)





ロアルの心の闇が、夜の闇と重なりあってより深い闇へと堕ちてゆく。
ゆらりと揺れるその闇は不気味で仕方が無かった。






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