mirage of story

〜3〜










(まさか、あの者にまた相見ゆることとなるとはな......)



ロアルはまだかなり新しい記憶を頭の中に思い起こしていた。

炎の中で見た、紅の瞳。
目が合ったその瞬間、忘れかけていた昔の記憶が流れ込んできた。



懐かしい。
思いがけない者との再会。

ロアルは心の中で苦笑した。 










(あの者も、随分と変わったものだな。

時が経つというのは........これほどまでに早いものとは)






もう何年も会っていなかった。
会うこともないと思っていた。

だから、顔なんてもう忘れてしまっている......そう思っていたのに。




なのに。
そのはずなのに。

たった一目で分かってしまった。


やはり、人を忘れるということは容易に出来ることじゃない。 
ロアルは内心、驚いた。










(何年前のことだろうか?
......昔、私はあの者と時を共にしていた)



そしてふと浮かぶ想い。
それは普段の彼からは想像し得ない程に、人らしさを帯びていた。








(......あの者は、私のことを覚えているのだろうか?)



そんな疑問が、不意に頭の中を駆け巡る。 

先程、再会を果たした時に相手はその再開に気付いていたのだろうか? 
自分の存在する記憶が、まだ残っていたのだろうか? 


それは、まるで判らなかった。

ただお互いの瞳が合った瞬間に見えた、驚きと戸惑いが入り交じった表情。 
その表情が脳裏から離れない。 






.......やはり、覚えていたのだろうか? 

この私の存在を。