この現実が、本当は夢であって消えてしまうことを願いたい。
そう思ってしまうような人物と、カイムはつい先程に自分たちの最大の敵として逢ってしまった。
思い違いかもしれない。
だけど自分があの人を見間違えるはずはないという、不思議な確信もある。
あぁ、嫌だ。
カイムは、嫌な考えから震えだす体を必死に抑える。
握る拳。
嫌な汗がじんわり滲む。
(大丈夫だ、きっと。あれは........違う)
大丈夫。
その言葉で、カイムは不安をかき消した。
(相手が誰だって大丈夫。
..........俺は独りじゃない。仲間が、シエラが居るから)
独りじゃなければ、仲間が居れば大丈夫だ。
前に進める。
そうカイムは不安を勇気に変えて、改めて思いを固くした。
(......俺も少し休もう)
カイムは、隣で眠るシエラに自分の上着をそっと掛けると、静かに目を閉じる。
(...........朝には、ここを離れよう。
明るくなれば、またきっと奴等がまたやってくる)
カイムはそう、目前に近づく旅立ちの朝を想いながらゆっくりと眠りの中へ堕ちていった。

