mirage of story

〜3〜







あの朝もシエラは不思議な夢を見た。
暗闇の中で誰かが哀しそうに私の名を呼ぶ、そんな夢だ。



そして夢から覚める時、何故だか分からないが泣いていた。
自分には何で泣いているのか分からなかったが、とにかく切なくて涙が出た。


そう。
まるで今日のシエラと同じように。



その理由の分からぬ涙は、なかなか止まらなかった。










そんなシエラの様子を見たエルザは、ただ優しく微笑んで涙を拭ってくれた。優しく頭を撫でてくれた。
『大丈夫』って宥めてくれた言葉が、凄く温かかったのを覚えている。

そんなことを思い出し、胸が少しだけ熱くなる。









あの日シエラが目覚めたのは、もう陽がすっかり昇ってしまった頃だった。
普段、寝坊など滅多にすることのないシエラにとっては珍しい。


グッ。
シエラは縮こまった身体を伸ばす。そしてシエラは一つ欠伸をして、外の様子を見た。





カーテンの向こうからは光が洩れる。
うん。外は快晴のようである。




洩れる太陽の光を、暫らく満足にながめる。
そして暫らく経って、唐突に何かをハッと思い出したようにシエラはベッドから飛び退いた。

ベッドから飛び退いた彼女は、おもむろに出かける準備を始める。





どうやら外出の予定があったらしい。

顔を洗い、服を着替えて準備は万端だ。
......少し寝癖は気になるが、今日の所は見逃しておこう。








「それじゃあ、いってきます！」



準備を整え、元気よく外へと繋がる扉を開いた。
開いた扉からは光が溢れる。


その光に一瞬目を細めたが、すぐに目が慣れそのままシエラは駆け出した。




行き先は決まっていた。
それは丘。風吹き抜けるあの丘。