それが、生きている者に科せられた義務なんだ。
生きている以上、現実からは逃れられない。
でも人はそれを受け止め、前に進むしかない。
たとえこの先に、どんな辛いこと哀しいことが待っていようとも人は、その中に飛び込んで行かなければならないのだ。
カイムは、隣で静かに眠るシエラを見た。
(―――シエラは必ず俺が守る。
どんなことがあっても、独りにはさせない)
独りにはさせない。
これが、カイムの中で出た答え。
これがシエラの村を救えなかったカイムが出来る、最大の罪滅ぼし。
だから、守らなきゃならない。
今、隣で眠る大切な仲間の存在を。
そして果たさなければならない。
二人で誓った、魔族を倒すという約束を。
たとえ、敵が誰であっても。
どんな未来がこの先あろうとも。
カイムの脳裏に、ふと甦る自分たちの敵である者の姿。
思い出すだけで滲み出る冷や汗。
恐ろしさからだけじゃない。嫌な感じをカイムは感じ取っていた。
自分の古い記憶と、不合理に重なり合う.....敵である男の姿。
知っているような、でも絶対に重ならないあの男。
もし、カイムの中で不合理に重なり合う人物が同一人物だとしたら。

