mirage of story

〜7〜







どのくらい泣いたのだろう―――。

空を見上げれば、夜が明け始めうっすら明るくなってきていた。






(.....朝か)




カイムは涙で腫れた目をおそるおそる開けた。

差し込む朝日が、眩しく感じる。嫌になるくらい、清々しい朝だった。



涙で赤くなった目は朝日の光を浴びて、ちょっと痛む。






この一晩、カイムは失望の気持ちを胸にずっと思っていた。




(もう俺には....帰る場所なんてないんだな)



そう、どこまでも続く荒野を目の前に改めて思った。




まだずっと先だと思っていた、旅立ち。

それがこんな早くに、しかもこんな形で訪れるだなんて。想像もしていなかった。





ずっと此処にある。

そう思っていた自分の故郷が今、まるで最初から何もなかったかのように荒野が広がっている。



やっぱりまだ、信じられない。








村を旅立つ勇気。

そんなもの、今になっては何の意味もなくなってしまった。



あぁ。
あれほどまでに重かったはずの決意が、今はただ虚しく散り行くだけ。






黒い風の渦に飲まれていく中、最期に母がカイムに言い放った言葉が脳裏に蘇る。



『――――生きなさい、カイム』




母はカイムに『生きろ』と言った。
自らの死が目前に迫っているそんな中、母はカイムに言った。


どんな状況に侵されていても、母の優しさは変わらなかった。





そう、思うとまた涙が出そうになる。






そして、脳裏にもう一つの言葉。