「呼ぶのが遅れてすまなかった。

一人大幅に遅刻してきた誰かさんが居てね?
少し遅れが出たんだ」



「なっ!告げ口かよー、大人気ないぞ!隊長....ってもう隊長じゃないけどっ!

だから遅れたのには、ちゃんと理由があって....って聞いてる?」




ライルのほんの少しからかうような発言にジェイドの反論が響いたが、ライルはそんな声に耳を傾けないまま天を仰ぎ更に続ける。










「.........まぁ、今日は祝いの日。大目に見てやるのも良き王のすることだろう?

さぁ、民達もお待ちかねだ。
この国にその手で名を―――命を吹き込んで貰いたい」




ライルは翳した手の平にグッと力を込めて握り締める。

突き上げられた拳。
人々は強い意志と決意を見る。










"よかろう。
この国の未来が美しく幸あるものであるために、我等が名を与えよう。

我等が三日三晩寝ずに考えた素晴らしい名を――――"



「え!?」




"冗談だ。

そう、三日三晩というのは冗談だが.......この新たなる国の始まりに相応しい名を君達人のために用意をした。
素晴らしい、そして未来永劫この世界に刻まれ残る名だ。

君達はその大いなる歴史の一頁の傍観者となるのだ。
―――確とその耳に、その心に刻み付けるといい」










シンッ。

ただでさえ静かだった辺りが、一層に静かになり辺りに在った微細な音さえ消えたのが分かった。


低く優しく包み込む響き。
染み渡るような響き。
















"新たなる国の名―――――その名は"



息を飲む音さえ、空間に飲み込まれて消える。








"―――――カイム"








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