「この国の創設者であるのは認めがたい事実だが........この先万が一にもこの国の行く先に支障を来しすなら、私が一刻の猶予も与えずお前を消す。
この新たな国の飛躍への助力をする―――そのために私は此処に残った。
故にこの国の王たる彼等にはこの身の全てを捧げ忠誠を誓うが、お前は対象でない。
.......私はあまり好き嫌いなどの感情は持たないつもりだが、お前に至ってははっきり好かない。
お前のことは人であるどころか虫以下としか思わぬことを、今一度此処で明白にしておこう」
と、まぁ酷い言い様をサラリと言ってのけるロキだけれど。
その口調故に冗談には全く聞こえない.....というか本人の中でも冗談の意識は全く無いと思われるロキだけれど。
きっと、彼自身は気付いていない。
シエラやライル、そしてジェイド達と出逢い共に過ごした日々によって明らかに彼自身が変わってきていることに。
彼の固まった心が少しずつ溶け始めていることに。
ッ。
........誰もが見逃してしまいそうなほんの微笑ではあるけれど、彼等と出逢ってから確実に笑うことが多くなっていることに。
そう彼は、ロキはまだ気が付いていない。
「ロ、ロキちゃん.....俺ってば本当に泣きそうなんですが。
いつからこんな子になっちゃったのかしら、全く。
これじゃあ天国のジスのじいちゃんも悲し―――」
「ジス殿を勝手に殺すな。
あの方は今、持病の腰痛の悪化で療養中なだけだ」
え?ジス様って、腰痛持ちなの?
まぁ.....あの御歳だから仕方ないか。
だから救世主のお一人であるはずのジス様の姿が見えないのか。
二人のやり取り、耳に届いたそれに一瞬で民達の視線が"そうなんだ、ジス様って"というものに変わる。
不覚ながら、ジスが腰痛持ちであるというどうでもいい機密情報が全ての民に知れ渡る。
「.........」
自分の口が知らぬ間に滑っていたことに数秒経ってロキも気が付くが、もう遅い。
しまった。
そんな顔が無表情の彼にしては分かり易く出た。
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