「お、ちょっ.....待て待て待てぇい!
.......コホンッ。
待てってば、お二人さんにロキちゃんよ?
悪い悪い、単なる冗談さ。
嬢ちゃんにライル、遅れたのは悪かったな。
どうしても外せない野暮用があってね?
でもまぁ、最後には間に合った。
この有り難い式典も大詰め.......俺も一応はこの国の創設者の一人なんでね?真面目にやるさ」
いつものようなやりとりだが、ジェイドはハッとする。
今此処は仲間内だけの楽しい談笑の場所ではない。
自分に背を向けた三人の向こうからの刺さるような無数の視線―――集まった民達のポカンとした眼差しにさすがのジェイドもほんの少しだけ恥ずかしくなったらしい。
一応、こんな彼も先の戦いを経て救世主と何とも崇高な名で称される身。
表面は軽く、悪く言えば少し馬鹿のようにも見えるジェイドだが彼は別に馬鹿ではない。
寧ろこの中の誰よりも頭が回るのだ。
国の始まり。
世間体.....つまり民からの評価を早々に下げるような真似は出来ない。
そう、彼の言う通りジェイド自身もこの国を今日この日に世界へと誕生させた立役者の―――王で無くともこの新たな国の創設者であるのだから。
視線にハッとして一つ咳払いをし誤魔化し、それから苦味を含んだような笑みになり自分に背を向け先に進めようとする三人を追う。
「ちゃんとやる気があるのであれば、始めからやれ」
「........はーい」
後ろから少し跋が悪そうに来るジェイドに、ロキはやはり声色を一切変えずに言う。
やはりこの二人は何だかんだで結局は良いコンビなのだなと、隣で二人はその様子にフフッと軽く笑った。
仲が良い。
もうそれは端から見ても、つまりはシエラやライルからでなく一般の今こうして集まる民達の目にも明白なのだ。
だがそれを口にしたところでジェイドはともかくロキには全くの自覚が無い。
だから敢えて誰も口には出さない。
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