mirage of story










「いくら俺でもそんな見られたら照れるって。

あー、止めろ止めろ!二人してそんな目で見るなって!
..........まぁいいだろう、隊長にロキちゃん。
どうやら最後の一大イベントには間に合ったみてぇだしなぁ、嬢ちゃん?
.........おっと」





ふざけたような仕草でロキとライルの言葉を流して、それから先程よりは幾らか申し訳なさそうな声で言う。

シエラとライルを改めて見たジェイド。
ヒラリと手を振りながら、二人の姿にハッとしたように言葉を一瞬詰まらせてそしてニカッと笑って付け加える。







「これは申し訳御座いません。
隊長も嬢ちゃんも、今はもう陛下とお呼びしなければいけませんでしたね?」




いつもとは違う二人。

そう。
王としての二人を前にジェイドはわざとらしく口調を正した。










「止めろ、ジェイド。
お前がそんな口調だと気味が悪い。
それに陛下なんて、そんな呼び方は要らない」


「そうです、そんな呼び方は止めて下さい。
気味が悪.....じゃなくて調子が狂います」


「止めておくといい。
それにお前からその面の厚さと軽々しさを取ったら何も残らない」




三者三様。
言葉は違えど意見はピタリと重なり、即座に上がる否定の声。








「お前等ねぇ......人が真面目になればなったで何だ、その言い様は。

何度も言うようだが、俺って見掛け通り凄ーく繊細なわけ。分かる?
だからお前等、俺の扱いはもっと丁寧に優しくだな――――」





「............まだ式典の途中であったはず。
皆を待たすのは王として信頼を無くす」


「そうだな........よし、先へ進めよう」


「そ、そうね」




表情一つ変えないロキの言葉に二人も便乗してみる。

華麗にジェイドの言葉を素通りして、三人はわざとらしく目を逸らしそそくさと彼に背を向けた。







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