mirage of story

〜2〜










「今此処に宣言しよう。
この生まれたばかりの新しい国が、いつの日か平和の象徴になることを!

壊れかけたこの世界は俺達人の手で必ず美しい世界へ復興させる!
魔族も人間もその境無く、手を取り合い平和を後世へと繋げる。

争い無い、この世界に生きる全てのものが平和に笑い合える世界。
今日というこの日を、その理想郷を現実にする第一歩にしよう!」





静まり返る広い空間。
響き渡る凛とした強い声。

息を飲むように狂いなく皆が一点を見つめる。




集まる民衆の数は知れず、広場には人が溢れんばかりに響く声に動きを止めて耳を傾ける。

大人も子供も、男も女も。
そして魔族も人間も一同に会す。









ワアァアッ!

響き渡る声の余韻が冷め、追いかけてくるのは沸き上がる歓声。
溢れんばかりに集まる人の声が想いと共に一つとなる。



誰も彼もその瞳は輝きを放ち、その奥で皆明るい未来とその未来へと導いてくれるだろう新たなる王を見ていた。
皆の瞳に一点、青色の希望が映し出されていた。




民衆が会す広場。
その中心に築き上げられた決して立派とは言えない地面から数段だけ上がっただけの質素な立ち台。
その立ち台の上に王―――ライルは立つ。



手を伸ばせば届いてしまうような近い距離。

普通ならば有り得ないようなことだが、この国は今正に生まれたばかり。
故に王も生まれたばかりで、元々は一般の民であったライルは王として気取り高いところから集まる民を見下すことを良しとはしなかった。



民と同じ立場で。
皆と、同じ気持ちで。








「よっ、隊長格好良いー!」


「止せ、この馬鹿!
もうライルは隊長じゃねぇ、国王だぞ!?」



歓声の中、ちらほらと見えるは見知った顔。

歓声に混じり聞こえるそんな声に、緊張で張り詰めていたライルの顔がフッと綻んだ。






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