「なぁ、キトラ。
今日はな、めでてぇ日なんだ。
何てったって今日はこの世界に、新しい国が出来るんだ。
魔族も人間も関係ねぇ、見境無く暮らす新しい国さ」
三年前に想いを馳せて暫く沈黙に浸っていたジェイド。
風に小さく揺れる花束をそっと指先で撫でて、フッと笑い一人大地に呟く。
「その新しい国の王ってのは誰だと思う?
新しい国の王、お前もよく知ってる奴さ。
ハハッ!聞いて驚け?
隊長さ、あのライルなんだぜ?」
ザワッ。
問い掛ける言葉に、指先で弄る花が少しだけ騒めく。
まるでジェイドの言葉に驚きを隠せないキトラがそうさせたように思えた。
揺れる花の向こうに、目をまん丸くして驚くキトラの顔が目に浮かんでジェイド一層に笑う。
「それに.......今日がめでたいのは、それだけじゃない。
新しい国、新しい王の誕生―――そして新しい王妃の、女王の誕生の日だ。
ライルの相手は誰だと思う?
これまた驚きなんだぜ?
ルシアス姫さんだ。
そうだよ、あのルシアス姫さんだ。生きていたんだよ、彼女は。
あの時、お前も会ったろ?
あの人間のシエラって嬢ちゃん.......あの嬢ちゃんが、あの俺達魔族が命を狙っていたあの嬢ちゃんが彼女だったんだ」
今では世界の誰もが知るあの頃の真実。
だけれどそんな真実さえも知り得なかったキトラに、三年の時を経て知らせてやる。
きっとキトラも自分が死んでからこんな驚きを与えられるとは思ってもみなかっただろう。
.

