いつもの軽口で、冗談は止めろと笑い飛ばしてやろうとしたが無理だった。
声さえも出せなかった。
他人には深入りしないと決めていたというのに。
目頭が熱くなる。
スゥッと頬を伝うは、涙の感触。
自分がその決まりに忠実であったのなら、こんな涙は流さなかったのにとジェイドは自嘲に笑う。
どうやら知らぬ間にその決まりを破っていたらしい。
どうやらジェイドは、自分のことを本当の兄のように信じて慕うこの弟のようなキトラという少年に何時の間にか深入りしてしまっていたらしい。
声も掛けられないままに、キトラの瞳は再びに閉じられた。
もうそのエメラルド色の瞳が開くことは無かった。
せめてもの救いは、彼の最期の顔が笑っていたこと。
抱える動かなくなったキトラをジェイドは静かに地面へと下ろした。
涙は無理矢理止めた。
地に横たわるキトラに大きく気持ちを引かれた。
もっと傍に居て、泣いてやりたかった。
ッ。
だけれど、あの時そんな甘いことは許されない。
今は仲間の死を悼むよりもしなければならないことがある。
生きている仲間と未来のために、この涙は捨て置き前に進まなくてはならない時だった。
そうでなければもっと沢山の仲間を失う。
きっとそれはキトラも望みはしないと判っていたから、ジェイドは彼に背を向けた。
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