mirage of story











..........。


そこは無数にある大地の傷跡のその一つ。

抉られた大地のクレーターの真ん中に、見慣れた彼の金髪が見えた。






ゴクリと息を飲んだ。
一瞬だけ思考が止まった。

そして......気が付いた時にはジェイドは彼の元へと飛び降り駆けていた。




彼の名を叫んだ。
すると、倒れる彼の金色の髪が微動した。

反応があった。
彼は生きていた。まだ、その心臓は動いていた。

ジェイドは見落としてしまいそうなその微動を捉え、倒れるその彼の身体を抱え起こす。

すると微かに呻く声。
ゆっくりと微かに開かれるエメラルド色の瞳。





".............兄.....貴?"


弱々しいあの声は忘れられない。
ジェイドの姿を捉えた彼は―――キトラは、彼が求め焦がれた人の名を呟く。

キトラには現実を見ているという意識は無かったかもしれない。
あの時の......意識は薄れ最期の力を振り絞り瞳を開けた彼にとっては、まるで夢だったのかもしれない。




会いたい人に、会いたい兄貴にジェイドに会えた。
最期に会うことが出来た。


此処は戦場。
だが恐れていたような敵としての再会ではない。

こんなに嬉しいことは無い。
キトラは、笑っていた。








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