mirage of story

〜6〜






ザァー....ッ。






帰りを急ごうと歩を速めたカイムに突然、目の前を強い風が駆け抜ける。
カイムは風の強さに思わず目を閉じた。






(......何だ、この風)



ただの風。
そのはずなのだが、カイムはその風に妙な胸騒ぎを覚えた。


嫌な風だった。





(何か、嫌な感じがする)



何だろう、この感じは。

言葉では言い表わせないこの感じ。
何故だか分からないけど、本能がカイムに警告音を出していた。


いいことではなさそうだ。
ということは直感で分かった。







カイムはそっと目を開き、もうすぐ近くにあるはずの自分の故郷を見た。






(.......何だ)





カイムは愕然とした。
言葉を失った。

いや、言うべき言葉が見つからなかったという方が正しいだろう。



それほど、今の状況を把握するのは難しかった。






カイムの視線の先。

そこには、今まで見たことのない異常なまでに禍々しい力を纏う不気味な黒い風が、村を取り囲むように渦巻いていた。







(―――何だこれはっ!?)



状況が掴めない。

カイムは急いで、その謎の黒い風に取り囲まれた自分の故郷へと駆け寄った。




――――ブアァッ。


村の目の前まで来ると、カイムはとてつもない強い風に襲われた。



逆巻く風がカイムの動きを阻む。

その風にカイムは、身体が飛ばされぬように剣を地面に刺して、そこにしがみつく。




何かに掴まっていなければ、まともに立っていられない。







(早く、早く母さんの所に行かないと!)




カイムはそんな衝動に駆られる。



渦巻く風の中からは、泣き叫ぶ人の声。

村の中は混乱しているようだった。
こんな異常な状況なのだから無理もないが。