"..............止めろ、我が同胞よ"
醜悪な闇色の竜。
その止まらぬ破壊を遮ったのは、もう一匹の竜。
光を放つ竜。
水竜と炎竜が重なり、一つの形となったその竜の姿。
"来たか、裏切り者。
黙れ。
我等気高き竜の誇りを捨て、愚かな人の手に堕ちた出来損ないが何を言う。
貴様等は我等が一族の大いなる穢れぞ!
同胞などと名乗るなど不愉快極まりない......虫唾が走るわ"
止まらなかった攻勢が止み、闇が浮かべていた笑みは光によって消される。
闇の前に現れたその光。
光は地上に舞い降りて、闇と真正面から対峙する。
光の竜が舞い降りた地上。
一面に覆っていた闇が其処だけ晴れ、濃厚な闇が少し薄らいだ気がした。
"お前が幾ら何を言おうとも、我等が血の縁は切れぬ。
この世界を守るべき存在である我等の役割を忘れ、今まさに世界を終焉へと導こうとするお前であろうと我等はお前をまだ同胞と呼ぼう。
.......お前は我等が誇り高き竜の血を分けた同胞。
だからこそ、その同胞が犯そうとする過ちは我等が止めねばならぬ。止める責任がある"
"黙れ!"
二匹の竜が、世界の終わりを前にその結末を巡り睨み合う。
ギラリと鋭い漆黒の闇色の瞳には、溢れ出る憎しみが。
ジッと見つめる光の瞳には、目の前の闇を掻き消すような強い意志の色が。
相反する二つはぶつかり合い、中和されて空気に溶け込んだ。
"かつて我等が治めていた世界は清らかで美しく綺麗だった!
だが、それがどうだ?
人などという存在がこの世界を我が物顔で這い回り世界は汚れ荒んでしまった!
判らぬのかっ!
こうなってしまっては、もう手遅れだということが!
かつての世界を取り戻すには、元凶たる人の存在をこの世界から抹消するしかない.......この汚れてしまった世界ごと破滅させ再生させる。
それしか道は無いのだ"
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