.........。
竜の声?
その言葉にロキは顔を微かに歪め、耳を澄ませてみる。
だが聞こえない。
何も聞こえない。
もしそんな声がしているのならば、人一倍に敏感なロキのこと。
すぐに気が付くはずなのに、ロキ自身にもその自信があるのに聞こえない。
「うーん、なんて言うのかな。
これも魔力か何かの類なのかもしれない......だったらロキちゃんには分からなくて当然か。
だが確かに聞こえる、微かだけど。
そして確かにこの声は、俺達を導こうとしてる」
「...........魔族というのは、便利な生き物だな」
「なぁに、魔族も人間もそう変わりはしないだろ?
あるのは、ちっぽけな違いさ。
ただそれだけ」
..........。
ジェイドが言う声に、ほんの一瞬だけ沈黙が流れる。
「ただそれだけ、か。
だがその僅かな違いというものが、このような戦いを生んだ。
人は多少でも自らが持たない力持つ存在を、自らには無いものを羨みそして畏れる。
その自らに無い力への畏れは妬みに変わり人を狂わせる。
ほんの僅かな違い。
人と人との関わりに亀裂を生じさせるだけのその僅かな差を、神は何故創ったのだろうな.......」
笑うジェイドに、冷たく視線を落とすロキ。
魔族。人間。
元々は同じ種族で枝分かれし確立した両種族。
どんな理由があってその血を分かつことになったのか、それは分からない。
ただ次第に魔族は魔族として人間は人間として確立していった歴史の中で、かつて同族であった彼等はお互いの力を恐れて自らの種族を守るために相手を傷付けるようになった。
平和な時代もあった。
だが、時代の流れで両者の間の溝が深くなって戦争が起こりカイムのようなどちら側にも属せない哀れな存在も生んだ。
魔族と人間。
その違いはほんの僅かの差。
だがその差が人へと齎したものは、大きい。
それなのに何故、神は敢えてその差を創ったのだろう。
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