近付く声がロキの真後ろで止まる。
キイィンッ。
ロキはその気配に地から抜きかけていた剣を抜き、構えるわけでもなくただ握り締めて声のする方を振り返る。
「やっほー、ロキちゃん。
遅くなってすまなかったな」
振り返ると案の定、ヘラッと笑う紅の瞳。
軽くと手を振り、まるで遊びの待ち合わせに遅れてきたような感じで此処が戦場の真っ只中であることを一瞬疑わせた。
「.............何だちゃんと生きてたか。
なかなか来ないので、もうくたばったのかと思った」
「え、酷くない?それ」
「それよりも.......もう用事とやらは済んだようだな」
ジェイドはロキと共にシエラ達とは別行動で、馬でこの地を目指してきていた。
本当ならば共に攻め込み、本人達が本望と思うかは別として共に背中を任せ戦うはずだった。
予定としてはそのはずだった。
だが此処へと向かう途中、ジェイドは兵達の進行をロキに託して一時離脱。
ジェイドは馬で駆け抜ける地に何かを見付けた。
それは戦場としては至って普通の光景で他の者には分からなかったが、ジェイドには見過ごせないものだった。
見付けたそれが何かは言葉にははっきりと出さなかったがその瞳でロキを納得させて、ジェイドは後から追うこととなっていた。
「やっぱりロキちゃん、何処にいてもつれないねぇ。
......まぁ、いいさ!お陰さんで用事は片付いた。
迷惑かけてすまなかったな。
もう大丈夫さ、これで心配事は綺麗さっぱり無くなったんでね。
あとはもう気兼ねなく、思う存分に敵さんを倒すだけさ」
事の詳細はロキには分からない。
だがそんなことを追求する趣味は無いし、そこまでの興味も無い。
ロキは「そうか」とただ頷いた。
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