ドドオォンッ!
一人闇の中を進むロキ。
そのすぐ横を攻撃の一派がすり抜けた。
グラリと空気が揺れ、ロキからそう遠くない地面が抉られ吹き飛んだ。
その反動の爆風が吹き荒れ砂埃が舞い上がる。
歩を進めていたロキは、咄嗟に剣を地面に突き立ててその風に身体を持って行かれないように身を屈めた。
「何か、状況を打ち砕く手は――――」
爆風に耐え、頭の中に考えを巡らせる。
だが見事なほどに考えは思い浮かばす白紙のままで、さすがのロキも顔を歪める。
滅多に見られることはないロキの人間味が、ふと垣間見えた。
暫くして爆風が止んで、ロキは歪めた顔でたった今吹き飛んだばかりで煙を上げる真新しい大地の傷跡を見る。
「..............ジス殿や彼等は、無事なのだろうか」
壊されていく世界。
それを目の当たりにし、その戦場の最前線でロキは頭の中に浮かんだそんな言葉を口にする。
ッ。
それは彼にとっては全くの無意識で、自らが口にしたその言葉に気が付いてハッと驚いた。
誰かの身を案じる言葉が、この自分の口から零れるなんて思ってもみなかった。
普段は自分の感情や想いをほとんど表には出さないロキ。
それは決してわざとではなくて、ただ生きていくうちに彼の中で自然とそういう生き方が根付いてしまっただけなのだけれど彼自身も自分はそういう生き方しか出来ないのだとそう思っていた。
彼には―――ロキには周りの者はほとんど知らない暗い闇に包まれた過去がある。
その過去故に彼は自分の存在を自らの中に抑え込み、その自分を無闇に誰かに晒さぬように生きてきた。
無闇に人を信じはせず、孤独に生きてきた。
今でこそ彼はジスという人物に心を開き付き従っているが、ジスと出会う前までは彼は本当に孤独な男だった。
今彼が信じるは己と、全てを信頼し託すと決めたジスだけ。
正直他の者とは深く関わりたくはなかったし、酷いことを言うようだがどうでもよかった。
そのはずだった。
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