「これは俺だけで終わらせなくちゃならない。
俺の責任だから。俺のけじめだから。
全ては俺の手で。
貴方の手を借りることは許されない。
貴方を巻き込んで傷付ける訳には、絶対にいかない。
俺が、全て終わらせる。
この戦いも、俺自身の存在の意味もその罪も。貴方の憎しみも」
言葉を紡ぐ。
それごとに、カイムの瞳の哀しみの濃さは増して苦しみに耐えるようにぐらりと揺らぐ。
言葉が詰まる。
空間に満ちる空気が滞る。
聞こえる、荒くなる息遣い。
動悸は激しくなり、どうにも汗が止まらなくなる。
カイムが次に紡ぎ出そうとする言葉を、彼の心は全力で拒否していた。
だが、その言葉はもう彼の中には留めることは出来ないくらいに大きくて、彼の口から嗚咽に似た声が零れる。
「......................俺はあの人の、ロアルの息子だ。
あの人は俺の父親だ。
――――俺は貴方にとって仲間じゃなかった。
貴方が世界で一番に憎む人が父で、俺はその息子。世界がこうなってしまった元凶。
貴方にとって俺は.........憎まなきゃならない最低最悪の存在だったんだ。
だから全てを終わらせるのは、俺じゃなければいけないんだよ」
言葉に出した。
無理矢理に外に押し出した。
とても、後悔した。
心の拒絶を無視した行動に、心が耐えきれずに嗚咽感に襲われる。
言葉してしまった自分とその真実に、自らを軽蔑してカイムはその場に崩れ込むように膝を突く。
言葉の意味が理解出来ないで呆然とするシエラ、崩れ落ちるカイム。
見守るライルも、その姿に苦しそうに顔を歪める。
この空間でただ一人。
一際に濃い闇を纏わりつかせて笑うロアルに、空間は修羅場に突き落とされた。
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