mirage of story










「シエラがどうして此処に.........」



重なる視線。
驚きを隠せない深紅の瞳。

思わず零れた言葉に、カイムは自分の置かれた状況を把握する。









「..........そうか、俺は」



自分が眠りに落ちる前の記憶を辿るように頭を押さえると、カイムは悟ってまた零した。


カイムは視線をシエラから外し、自分の記憶の真偽を確認すべく後ろを振り返った。

振り返るとそこには、ロアルの漆黒の姿。
カイムは全てを理解した。














「.............シエラが来る前に終わらせるつもりだったのに」



カイムはシエラ達には聞こえない消え入るような声で呟いた。

終わらせるつもりだった。
そう言うカイムはとても悔しそうで、そしてとても哀しそうな顔をした。











「カイム!
私、貴方を助けに―――」


「シエラ、此処から逃げるんだ。
今すぐ、今すぐに」



「え........」




再会を喜ぶ言葉は無かった。

ロアルに視線を残したままに放たれるは、シエラを突き放す言葉。


真剣な声には一切の反論も許さぬ静かな凄み。
シエラは言葉を詰まらせ、その隣のライルも想定していなかった言葉に目を見開く。









「どうして......」


「此処は危険だ。
シエラは、君は此処に居ちゃいけない」







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