それどころか、ロアルはカイムの身体を地に横たわらせると彼をそのままに立ち上がり何歩か後退した。
微妙な間合いを空け、シエラ達とロアルの間にカイムの身体が置かれる。
シエラが頭の中でどう救い出すか考えていた相手が、目の前にいとも簡単に放り出されていた。
「一体何を企んで......」
「目を覚ませ」
「っ!?」
問おうとした。
一体、何を企んでいるのかを。行動の意図を。
だけれどそれよりも前に続けられたのは、重ねて予想を覆すロアルの声。
「...................此処は」
ロアルは、眠るカイムをその声で目覚めさせた。
目覚めろ。
その声にぐったりと地に横たえられたカイムの身体が一回大きく反応し、それからゆっくりと静かに瞼を持ち上げられる。
「カイムっ!」
シエラは叫んだ。
身体はカイムの元へと今にも駆け出しそうな程に前のめりになり、足は一歩前に踏み出す。
その動きに少しだけ砂埃が地面から舞い上がった。
「っ!シエラっ!」
目を覚ましたカイム。
むっくりと横たえられた地面から起き上がる彼は、鼓膜を震わせる声にハッとする。
起き上がった一瞬は何が起きているか分からないといった風に呆然としていたが、聞こえた声に意識は覚醒したのか声の主を探し振り返った。
ッ。
澄んだ水色の瞳と深い紅の瞳が、一点で重なる。
それは互いに見慣れた色。
だけれど何故か酷く懐かしく感じた。
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