mirage of story

〜5〜











シエラと約束したこの大地の上。
カイムはそこに、今たった一人で立っている。


辺りを見回しても広がる大地の他に何にも見えるものはない。
カイムの村も、あの日シエラと剣の稽古をした場所も、木も草も何もない。

此処に存在していたはずの光景はカイムの頭の中にだけ広がり、目の前には漠然とした大地が広がるばかり。










どうして。
どうしてこんなことになってしまったのか。





(.......)



カイムは言葉にならない思いを胸に、大地の果てをただ見つめた。

















(――――待っててくれ、シエラ。
絶対に、迎えに行くから)




数日前の記憶に遡る。
この時カイムの心の中では、シエラと交わした約束が響いていた。



シエラが去って二月経つというある日、カイムはいつものように剣の稽古をしている。
そんな時に、ふとシエラのことが頭に過った。












(あれからもう二月も経ったのか)



そう思う頭の中に、シエラが去ってからの練習の日々が思い出される。

あの約束を交わした日以来、カイムは今まで以上の時間を剣へと費やすようになっていた。











(今頃シエラは頑張っているんだ。
俺だって頑張っていかないと。約束を果たすためにも)





カイムの、剣を握る手に力が入った。
疲れていたはずの身体が、シエラのことを思うと元気になった気がした。



それから暫らく稽古を続けて、汗を流した。
そして一息つこうと流れる汗を拭い、ふとカイムは空を見上げる。









(もうこんな時間か)



いつのまにか空は夕陽でオレンジ色に染まっていた。
稽古に夢中で、時間が経つことを忘れていた。









(そろそろ戻ろう)





カチャッ。

カイムは剣を鞘に収めると、村への道を歩き始めた。