「―――――私は強くなんかない、凄くなんかないんだ。
私は弱いよ。いつも何かに怯えて生きてる。
すぐにその弱さに負けそうになるの。そんな自分にいつも怯えてる」
強くなんかない。
そう言う少女の頬笑みに、言葉とは裏腹な儚い強さを感じた。
「だけどね、もう私は何の罪もない人たちがこれ以上傷付くのは見たくないから。
....これ以上、世界が壊れてゆくのをただ見ているわけにはいかないから頑張れるんだ。
──――それに、私はあの時母さんを守れなかった。だからこれ以上、大切な人を失うなんて嫌だ。
守るべきものを守るためなら私は何だってやる。そう決めたのよ」
その言葉が、何だか凄く心に響いた。
「やっぱり、君は俺なんかよりずっと強い人だ」
「そんなこと......」
謙遜するように首を振る彼女に、カイムは強い眼差しを向けた。
「.........聞いて欲しいんだ。
俺もいつか君のように強くなる。
いつになるかはまだ自分にも分からないけど.....待っていてくれ。
もし俺が目的を果たすため旅に出たら――――君を、シエラを迎えに行く。
そして一緒に魔族を倒そう。終わらすんだ、俺たちの手で。世界を荒ませる醜い争いを」
カイムの眼差しに、彼女の水色の瞳が重なった。
二つの煌きが、ぶつかり交わるように溶ける。
それと同時に、二人の想いも重なったような気がした。
「―――分かった、待ってるよ」
少女の顔に満面の笑みが灯る。
そしてつられるように、カイムの顔にも笑顔が零れる。
迎えに行くと決めたカイム。
待つと決めた少女。
こうして二人の穏やかで平和で、温かな日々はひとまずの終わりを迎えた。
少女....いや、シエラとの大切な約束と共に。

