〜1〜









「走れ!
休んでいる暇は無い」




穴だらけの大地。
残された大地の上を上手くすり抜け、嘶き走る馬。

ドドドドッ。
馬の蹄の音を幾重にも重ね、ロキとジェイドを先頭に大地を行く。








目的の地は近くて遠い。

視線の先に聳える闇。
目にははっきりと見えているというのに、まだ距離はある。



シエラとライル、それからジス達と別れて三十分程。

先に出たはずだが、きっと着くのは竜に乗り空を行く彼等の方が遥かに先だろう。
もしかしたら、もう到着しているかもしれない。













「これ以上の遅れを取る訳にはいかない」



ロキは感情の籠もらない淡々とした声で言うと、手綱を引き馬の速度を上げる。



ヒヒイィンッ!

全速力で走り続ける馬は息を荒げるが、馬も本能で世界の危機を感じているのだろう。
どんなに息が荒げようと、その足を止めようとはしない。









走る大地。
辺りには大きく抉られた大地の傷跡と、横たわる無数の屍。


数刻前は戦場。
そして今は世界の終わりの舞台。

その舞台を彩る屍達は、もう人間も魔族も男も女も区別は無い。




充満する空気は、大量の血の気を含んで鉄臭い。

巻き上がる土埃で空気は透明さを失い濁り、息をするのを躊躇う程だった。














「あらら...........まさに世紀末って奴だね、これは」



走り去っていくと同時に、視線の端で途切れることなく流れ続ける地獄絵図。
嫌でも目に映る光景に、さすがのジェイドも眉を潜めた。








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