―――ドクンッ。
無事である確証はない。
その言葉にシエラの胸が不安に大きく脈打つ。
風が吹いたわけでもないのに、冷たい風が身体の中を吹き抜けた気がした。
身体中から汗がサァーッと引いていくのが分かった。
ドクンッ、ドクンッ。
一度大きく脈打ったシエラの心臓が、またいつものように一定のリズムで脈を刻み始める。
ただ、その脈の打つ音が心なしかいつもよりも鈍く重く響いた。
「これを」
促されて、老いて皺が無数に刻まれたジスの手から恐る恐る紙切れを受け取る。
その様子を見守る周りの視線。
その視線の中、震える手で折り曲げられた紙切れをそっと開くシエラ。
ドクンッ、ともう一度彼女の心臓が先程よりも大きく脈を打つ。
パラッ。
乾いた紙の音。
遠くで聞こえる破壊音をバックに、やけに大きくシエラの鼓膜を震わす。
開かれた薄汚い小さな紙切れ。
開いた先に在るのは、小さな紙面に描かれた小さな小さな文字。
黄ばんだ紙の色を背に黒い文字がくっきりと映える。
"貴方が自分自身の存在にけじめを付けに行ったように、俺も自分自身の存在にけじめを付けに行く。
シエラが言った「いってきます」の言葉に、笑顔で「おかえり」って迎えたかった。
だけど、ごめん。
今の俺にはそれが出来ない"
二つに折られた紙の見開き半分。
そこにはカイムが今この場に自分が居ないことへの謝罪の言葉が綴られていた。
だが、そこには今彼がこの場所に居ない理由は書かれていない。
在るのはただ謝罪の言葉。
「......っ」
残るは見開きのもう半分。
そこには何が綴られているのだろう?
シエラは何だか視線をそこに映すのが、どうにも怖かった。
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