「ごめんなさい....嫌なことを聞いて。
私、何にも知らなくて」
頭の中に嫌なものが込み上げて拳をグッと握る。
握った拳に食い込む爪の痛みに、ハッとしてカイムは我に返った。
気が付けば少女がこちらを覗き込んでいた。
どうやら知らない間に、ひどく悲しそうな顔をしてしまっていたらしかった。
「いや、大丈夫。
そんな者たちが集まる村だから、生きていくために俺は剣を学び始めたんだ」
この荒んだ世の中、こんな事情の小さな村で生き残るには自分を守る術を知らなければならない。
自分の身は自分で守る。
やられる前に、自分からやる。
いつ何者に襲われてもおかしくはない状況、これは欠かすことの出来ない生きる術と化していた。
「......私、何も知らなかったのね。この世界のこと。
知っているつもりでいただけなんだなって、そう思った」
少女のその言葉で、その後しばらく二人は黙り込んでしまった。

