ザワザワッ。
周りの注目も、ジスが視線を向けたその先に集まる。
シエラ。
そしてその横にライル。
向けられた視線に、人混みから再び騒めく声が聞こえる。
「姫様、よくぞご無事で。
お待ちしておりましたぞ」
注目が集まるその中で、ジスはゆっくりと穏やかな口調で口を開く。
老いた瞳の中にはシエラ。
ジスは彼女に深々と一礼をして、それから穏やかに笑った。
ザワザワッ.....ザワッ。
「―――あの方が、ルシアス姫.......」
ジスの声に、騒めく人混みから言葉が零れる。
その言葉から受け取れるは驚嘆。
それは魔族からも人間からも、変わらぬ驚きの声と視線。
「ありがとう、ジス」
止まない驚きの声と視線。
そんな騒めきに少し臆しながら、シエラは答えジスに会釈をした。
皆が驚きを隠せないのは、当然のことだと言えた。
今まで世間一般この世界の歴史の中では、彼女は―――ルシアス姫はもうとっくの昔に亡くなっていた。
そんな姫が生きていた。それも今、目の前に居るのだ。
驚かないはずがない。
今まで長年植え付けられてきた常識が偽りだったと、そう簡単に受け入れられない。
人は常識という確かなようで実はとても不確かなものに縛られて生きる生き物。
それは魔族も人間も同じ、人の性である。
「..........あの人は?」
驚嘆の声の中、言葉を返すシエラ。
そのジスと彼女のやり取りて周りの視線と驚嘆を前に、一人取り残されたのはライル。
驚きを隠せない周囲に一通り目を配り、それからシエラと会話を交わすジスと呼ばれる見知らぬ老人を見る。
見知らぬということは、きっと人間側の人なのだろう。
それは分かったが、老人がどんな人物か分からないライルは小さくシエラに尋ねる。
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