平和に見える。
だがそれは外面だけの話。
........。
内面はとても平和とは言えないことを彼はよく知っている。
「.........平和に見えるかも知れない。
でもね、違うんだよこの村は。
此処は、はぐれ者の村。
魔族からも人間からも追われてきた者たちが集まっているんだよ」
彼は悲しく笑いながら重い口を開いた。
声からは自嘲が滲む。
「魔族からも人間からも......」
「―――そうだよ。
此処は魔族と人間との間に生まれてきた者達が寄り添い合って暮らしている村なんだよ。
そう、俺もその中の一人」
かつて、この世界では魔族と人間が隔たりなく平和に暮らしていた。
お互いを認め合い、敬い合い共存していた。
その頃は魔族と人間との間に子が生まれることは珍しくなかったし、むしろ魔族からも人間からも種族の共存の象徴としてその者たちは大切にされていたものだった。
―――。
しかし、五年程前に起こった魔族と人間の対立の戦争が勃発し状況は一変。
魔族は人間を、人間は魔族を憎み敵視するようになる。
この世界から平和が消えた。
種族の分裂。
戦火は日を追うごとに激しくなる。
こんな世界になり、その狭間に生を受けた者はどうなったか?
想像出来るだろうか。
今まで両者に敬われていた立場から誰からも見離され追われる立場へ落ちる.....その者たちの思いが。
この戦争によりカイムたちのような者たちは、人間からも魔族からも受け入れられずに世界から隔離される存在へとなってしまったのだ。
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