「黒い、竜?
それに竜の上に居るあの人は.......ロアル様?」
世界の異変、黒く塗りたくられた世界。
そしてその世界に現れた竜と、それを従える見知った人の姿。
この異常な状況。
結び付く想像は限られてきて、きっとその想像は正解なのだろうとライルは心の中で思った。
「今起きていることは全部.........あの人が起こしているっていうのか?」
想像を言葉にする。
その言葉にシエラが頷いて、想像が確信になる。
王と慕っていた人物。敬っていた指導者。
ルシアスを失ったと絶望に暮れた自分に道を与えた人。その道そのもの。
その人が今、現実から離れたこの現実の中心として存在している。
これがどういうことなのか......具体的には分からなくとも、異常であることは分かる。
ライルは頭の中で混乱しつつも、その異常さを何処か客観的に見ていた。
"..............奴が元凶であるのは、今のこの状況だけでない。
この世界に君達が醜い争いへの誘われた全ての元凶。
世界を混沌へと導き破滅に向かわせる全ての元凶。
それが、奴ぞ"
混乱しつつも、状況を客観的に冷静に見るライル。
その彼の思考に折り重なるのは、頭上から注ぐ光の竜の声。
自分達を守る光の竜は、対なる闇色の竜を何処か哀しげに見つめながら言葉を紡いだ。
「全てはアイツの思惑。
私達を敵味方に引き裂いたあの五年前から始まった忌まわしい争い。
あれも自然と引き起こされ今に至ったものではないのよ。
..........アイツが裏で手を引き、私が指輪の契約者になって力を手にしたという情報を、私達魔族がその力で人間達を侵略するなんていう偽りの情報を重ねて人間に流し、不安を煽った。
そして人間という種族を守るためだと唆し、戦争を嗾けさせたの。
指輪と.....水竜と契約を交わした私を、殺すそのために」
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